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甲手について考える(3)
2020.05.08

甲手について考える(3)です。剣道具師の考察です。剣道の見方のひとつとして読んでもらえればと思います。

上から押さえる形だとおきてしまう気になる点を3つあげます。

(1)親指に力が入り、手首を伸ばした状態のまま振り上げるため肘が横に開かなくなる。(これは肩甲骨の動きと関係がありそうなので、専門家と意見交換会したいと思っている点です。)またこのことは、柔らかく短い面布団が主流になってきたことと関連があると考えています。

(2)上からかぶせていると肘を前後に使うため肘に負担がかかり、肘を痛めやすい。昔に比べて肘を痛めている剣道家が多くなっている印象があります。歳を重ねても世代を越えて一緒にできるという剣道の特性を考えると、自分の動きで身体を痛めてしまうのは勿体無いと思います。

(3)打突時に手首の可動域が小さく剣先が走らない。そして打突後竹刀が上がってしまう。これは打ち方が大きい小さいにかかわらず円運動にならず、刀法でいうと斬れない振り方ではないかと考えています。現代剣道ですりあげ技や切り落としが少なくなっている一因であると考えています。

以上のことは剣道具作りを職業としている立場から、どうして今の形になってきたのか、剣道のためにはどういう形がいいのかと考えた上で気付いたことです。(2020年5月)

今のテーマは甲手ですが、甲手以外にも道具のちょっとした変化が剣道に大きな影響を与えることを知っていただければと思います。難しいのは試合の勝ち負けはまた別のところにあることですが…。

以前から言っているように、剣道家・身体の専門家・お医者さん・学者さん・剣道具師等色々な立場から意見交換を行い、未来に今より少しでも良い剣道を伝えていこうという空気のある剣道界になって欲しいです。そのためにも、日本国内で剣道具作りをしている立場からすこしでも情報発信をしていくつもりです。

長くなりました。次回「甲手について考える」は「横から持っている様に見える」です。